在籍生/卒業生から

在籍生から

岸本光司

研究室配属の折に発生とライブイメージングを同時にできるような分野がないかと探していたところ、実習でカイメンに触れる機会がありました。原始的な多細胞生物でありながら幹細胞から個々に機能を持った細胞を分化させ、珪酸でできた骨片を立てながら体を広げていく様子に強く心惹かれ、この研究室に入ることを決めました。

決め手になったのは初期発生のタイムラプス(経時)撮影での解析を行っていたところです。明視野だけでなく、骨片を光らせて蛍光観察することで、個体の骨片を立てる位置に何らかのパターンが働いているということまで明らかになってきています。また、通常の倒立顕微鏡では見えない横からの画像も、ミラーを設置することで取得できるようになりました。

今までなかった新しい方法を、色々工夫して実現していくことが楽しいチームです。カイメンの発生だけでなく、手法の開発に興味がある人も一度見学に来てもらいたいと思います。

金城清花

あの身体を洗うスポンジって、生き物なの!??
って言っていたくらい、カイメンのことを全然知らなかった、、。

そんな私が、たったひとつの、芽球という幹細胞の集団から、成熟した個体を作れるというカイメンのことを知り、大きな衝撃・感動をうけ、研究をはじめ、いまやカイメンの虜です。

芽球は、親生体が滅んでしまうような過酷な環境でも生き抜き、新たにカイメンにとって適切な環境が整ったとき、はじめて発生して、個体を形成していきます。
芽球って、すごい!
すばらしいシステムだ!
と思い、芽球についてもっともっと知りたくなりました。

ということから、私はカイメンを芽球からハッチさせ、成長させたあとに再び芽球をつくるという、芽球形成の研究をしています。

たったひとつの、芽球という幹細胞の集団から、成熟した個体を作れる、というだけでも大きな衝撃なのに、その個体からさらに新しい芽球を形成できるのです。

凄いとおもいませんか?!

芽球をつくる過程も、すごくすごく可愛いのです。幹細胞が集合し、周りに可愛いミニ骨片ちゃん(芽球骨片)を作って、それらを移動させて並べます。
私たちは、この芽球骨片の動きを可視化することに成功しているので、今はその動きの解析をすることもできます。
その様子を見ると、まるで小さなカイメンの中に大きな生命の神秘を感じます。

カイメンチームでは、実験方法が確立してないからこそ、自分たちで工夫して実験を行っていくことができる楽しさがあります。
研究に興味を持ってくれた方は是非、見学に来てください。

高木壮太

ダイダイイソカイメン、クロイソカイメン、ムラサキカイメン。。。

潮間帯を歩くと多くのカイメンに出会えます。彼らの多くはバブルスライムのような不定形ですが、中には「カイロウドウケツ」などの美しいカイメンもいます。
他にも、近年では「ハープスポンジ」と呼ばれる近縁とは著しく形態の異なる肉食のカイメンが発見されるなど、カイメンの形態は多様性に満ちています。

さて、カイメンの形態はどのように形成されているのでしょうか?

学部生のときに発生生物学の授業を受けて「動物の体の作られ方」に興味を持った私は、原始的な生物であるカイメンの発生を扱っているこの研究室に移ってきました。

私たちが実験に用いているカイメンは「カワカイメン」という淡水性のカイメンです(”海”綿なのに!!)。
私はまだ参加したことはないのですが、毎年春にカワカイメン採集ツアーに出かけているとのことで、今から待ち遠しいです。

カイメンの研究は、実験系が確立していないが故の難しさはありますが、だからこそ「世界で私たちしか知らないこと」に出会えるチャンスに恵まれていると思います。

今は、カイメンで明らかになったことで生物学の常識をひっくり返したい、という密かな野望を持って日夜研究に励んでいます。
後は、船山さんやカイメンチームの皆様が差し入れしてくれる美味しい食べ物や各地のお土産も大きなモチベーションです。胃袋がひっくり返るくらい美味しいです。

実は、この原稿も「書くと船山さん御用達の洋食屋のハンバーグが貰える」という報酬付きです。

すいません、これは嘘です。

こんな嘘も許容してもらえるくらい(ですよね!?)、わたしたちカイメンチームは和気あいあいと、研究に取り組んでいます。
新しいことに挑戦したい方、お腹が減っている方、PCが得意な方(重要)の来訪をお待ちしております。

黒川達矢

みなさん、「動物」といえば何を思い浮かべますか?
犬?ネコ?カラス?クジラ?人間?
海綿!!と答える人は多分いないでしょう(だって動かないし…)。

そんな海綿も実は立派な動物で、しかも発生においては他の動物に負けず劣らず動いてます。
一つの受精卵が幾度も分裂を繰り返すのではなく、いくつもの幹細胞がバラバラに動きだしてダイナミックに体を建設していくのです。
この全く変則的な発生様式は、海綿がカンブリア爆発以前に他の動物と岐れて(別れて)以来、ずっと独自の道を歩んできた証拠です。
海綿は僕ら動物の中で、最も先輩なのです。

僕らが今こうして海綿と向き合えることは、五億年越しのロマンス:地球で最も壮大な恋なのかもしれません。

中川寛司

ミクロな生物学が好き。だけど、いきものを分子レベル以外でも見ていたい…と思ったことはありませんか?
このグループでは細胞レベルの事象を起点として、進化的初期に我々と分かれた現存する最古の多細胞生物であるカイメンを扱っています。
カイメンの身体のなかで、幹細胞が分化しながら身体を組み上げていく様子を見ていると、あらゆる生物に普遍的な「発生」の魅力を再確認できます。

カイメンから発生・再生現象を語るのは決して簡単な仕事とは言えません。
しかしその中で実験系を自分たちで組み立て、時には共同研究を進めて少しずつ見えてきた仕組みにワクワクさせられます。
私たちと一緒に個体・細胞・分子を行き来し、小さなカイメンに潜む大きな生命現象を丁寧に解きほぐしていきませんか?

乾ちひろ

カイメンを見つめて3年目(H26の時点で)…最初はカイメンの細胞から個体の一挙一動全てが驚きであり骨片のダイナミックな動きは衝撃的で感動しました。探求心をかき立てるカイメン。3年経った今でもそれはとどまることを知りません。

だけどもカイメンは一筋縄ではいかないつれない子ですがとても魅力的です。そして一緒に研究をするメンバーや環境に本当に恵まれていると思います。ぜひあなたも我らがカイメンチームの一員に!!!

菅野稚奈

以前にショウジョウバエを飼っていたことがありますが(家でではありません)、「カイメン」という生き物はこの研究室に来て初めて目にしました。芽球から小さなカイメンの体が作られていくのが目で見えるので、観察しているだけでもおもしろいです。

カイメンは、マウスやショウジョウバエと違ってまだまだわからないことだらけで、実験は試行錯誤の連続です。そこがいかにも“生物学者の実験”という感じがして、個人的にはとても楽しいです。


卒業生から

浜崎結

最近 、山中教授のiPS細胞の研究の特集などをメディアで見聞きする機会が多くなり、”幹細胞” という言葉が身近なものになった方も多いのではないでしょうか?

医学の分野ではマウスなどの哺乳類をを用いて実験している、というイメージがあるかもしれませんが、私たちは、カイメンという、現存する多細胞動物のなかで最も原始的な動物を用いて幹細胞の研究をしています。幹細胞は生物の進化の中で、多細胞動物が現れた際に獲得されたと考えられており、現在哺乳類などにある幹細胞システムとカイメンの幹細胞システムとの共通のメカニズムを学ぶことで、幹細胞の基本原理を理解することができると考えています。どのように幹細胞システムがつくりあげられたのかということに興味があった私にとって、カイメンは幹細胞の起源を探る研究にうってつけの動物ではないかと思い、船山先生のもとでカイメンの研究を始めました。

一般にモデル生物と呼ばれる動物を扱っていない私たちの研究は、まさにパイオニアです。実験一つとっても、様々な工夫やアイデアに溢れ、研究と全く関係ないと思われるような日常生活から得た知識や友人との会話の中から多くのヒントを得て、それが日々の実験に役立っていくことも多いです。そんなカイメンの研究には他分野の方ももちろん大歓迎です。毎日が新しいことへの挑戦で、このわくわく、ドキドキ感を私たちと一緒に味わってみませんか?

川井琴絵

カイメンの骨格形成の研究の中でも、骨片が組み上がる仕組みについて研究しています。カイメンの研究をしているというと「カイメン?なに?」と言われることも多いですが、骨片という部品を用いて、ダイナミックに体を作っていく過程を見てもらい、カイメンを知ってもらうと、多くの人は「すごいね!面白いね!」と言ってくれます。

そんな瞬間がやはり、とてもうれしく感じます。

研究自体は、毎日が試行錯誤の連続です。既存のやり方では、わからないことも多く、日々「新しいやり方」「新しい見方」を考えています。

そんな中で見つける新しいことは、いつも私たちの予想を超えていて、カイメンには驚かされてばかりです。

まだまだ始まったばかりでわからないことだらけだからこそ、自分の想像力と思考力、実験力が試されている研究だと思います。研究室のメンバーと議論(ときには突飛な妄想)を繰り返しながら、少しでもこの研究に貢献できるように頑張っていきたいと思います。

進導美幸

私は今までいろいろな生き物を見てきましたが、その経験で言えることがひとつあります。

「赤ちゃんは、カワイイ」

私が関わってきた生き物たちを例にとると

ホヤも、泳げる幼生期はまあ可愛い
ヤツメウナギは、大人はちょっとアレですが、卵、発生途中、生まれてきてからしばらくの間は、ふにふにしていて愛くるしい
ツメガエルも、大人はかなりアレですが、オタマジャクシから変態したての頃、餌が上手に食べられない様がとってもかわいい

カイメンの「赤ちゃん」もご多分に漏れず、カワイイのです。

黄色い芽球のまわりにホワホワとした体をつくりはじめたとき
もう少し成長して、体がキラキラと見えるとき
ヒョロヒョロの出水孔が水流で頼りなく揺れているとき

百聞は一見に如かず。
カイメンのかわいさが気になったら、ぜひ実物を見にきてください!

鷲田彩

今まで植物をずっと扱っていましたが、カイメン幼生を実体顕微鏡下で見させて頂いた時、カイメン=ちょっと触りたくない、というイメージが変わりました(成長しきったものはまだちょっと抵抗がありますが)。
幼生は光を当てると体全体がキラキラ光り、まるで宝石みたい。
毎日成長していく姿を観察すると、とてもかわいらしい事にも気付きます。
さらに、私はカイメン幼生を試料にして蛍光顕微鏡や電子顕微鏡でカイメン体内の細胞を観察していますが、小さな体の中に無限の世界が広がっています。