研究について

大きく分けて2つの研究プロジェクトを進めています。

I) 体の中で細胞が大工さんの様に骨片というパーツを組み上げ、建築物的な骨片骨格を組み上げる仕組みの解明

カイメン独自の機構に着目、解明することで、これまで知られていない全く新しい発生の仕組みを学べるのではないかと考え、現在力をいれて取り組んでいるプロジェクト。 骨片のライブイメージングに成功したことで私達が見出した、ダイナミックな骨片骨格形成の不思議を担うメカニズムの解明に向けた、国内外に類似の研究の無い独自の研究です。私達の解析で、カイメンの体の中には大工さんの様な細胞が存在し、ケイ酸で出来た針状の骨片を運び、立て、組み上げていることが分かってきました。 骨片をどこに立て、補強し、組み上げてゆくのかを決定する機構の解明を目的としています。

<アプローチ>
私達の研究のスタンスは、「自分たちで実験系を工夫して確立して新しいことを見よう!」です。他の生物では確立している様な手法を、自分たちで確立しなくてはならない苦労もありますが、新しい手法を確立すれば、他の人の見たことのない新しい世界が見えてくる!という驚きと楽しさ、それに工夫するアイディアを思いつく楽しさがあります。

これまで独自に1つ1つ手法を確立し、骨片のライブイメージングと定量的な解析、遺伝子発現解析、阻害剤を用いた解析を行ってきました。骨片骨格形成機構には、体内空間、物理量(基質に結合する力、骨片にかかる力、水流など廻りの環境からの力)が関与すると考えられるため、生物物理や、工学、数理といった異なる分野の方々と一緒に考える機会も増え、視野が広がってますます楽しくなっています。

もっと詳しく知りたくなったら大工さん細胞アイコンをクリック! → プロジェクトⅠ

II) カイメンの幹細胞システムと分子基盤の解明

近年特に着目されている「進化発生学:生物の体を作り上げる仕組みがどの様に進化してきたのかを考える」におけるカイメンの重要な位置づけ「現存する多細胞動物の中でもっとも古い動物門であり、起源的な発生機構を知る手がかりを得られるという特徴を生かし、ふつうカイメン綱の幹細胞システムはどの様な細胞種により構成されているか、幹細胞であるための起源的な幹細胞の分子基盤、制御機構の解明を目的としています。

これまでに、ふつうカイメン綱(カイメンの90%以上の種を含む)の幹細胞システムは、幹細胞アーキオサイトだけでなく、通常は特徴的な細胞形態を持ち、水管中の水流を生じさせ外からの栄養物を取り込むという特定の機能を持つ襟細胞から構成されていることを遺伝子発現プロファイルなどから明らかにしています。

<アプローチ>
これまでに、幹細胞集団からの個体形成(芽球からの個体形成)という実験系の特色を生かし、独自に確立した分子生物学的手法(遺伝子発現解析、抗体染色)を用い、アーキオサイト特異的な遺伝子を同定、これまで細胞形態から判断されていたアーキオサイト、襟細胞、いくつかの分化細胞を遺伝子発現で同定を可能にしました(Funayama et al.2005a, 2005b, Mohri et al. 2008, Funayama et al.2010, Okamoto et al. 2012)。 当研究室で作成したESTライブラリーから幹細胞アーキオサイト、襟細胞で特異的に発現する遺伝子の同定、最近では、工夫したFACSを用いてアーキオサイト、襟細胞の細胞種特異的なトランスクリプトーム解析を行い、また、芽球の中での休止状態のアーキオサイト、個体形成が開始され活性化しアーキオサイトとの比較トランスクリプトーム解析にも着手し、他の動物の幹細胞の分子基盤と比較できてきており、多細胞動物の幹細胞の分子基盤が少しずつ明らかになってきています。

もっと詳しく知りたくなったらアーキオサイトをクリック → プロジェクトⅡ
DGE
http://link.springer.com/article/10.1007/s00427-012-0417-5
Msi
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22464976
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1525-142X.2010.00413.x/full

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